こないだ書いた「LIFE!」と同時に借りてきて観ました。
タイトルやキャストから、から少し敬遠するような明らさまさを感じていたのでノーチェックだったんですが
内容は思ったよりも好みでした。
猫=可愛い
最強。というようなイメージがあるので
きっとそいつを凶器にして殴りかかってくるような映画だったりするんじゃないのかなーと勘繰っていたんですが
猫はあんまり重要じゃないというのが印象でした。
映画、という興行は「映画館に足を運ばせてしまえばそれが=人気」というような錯覚(良し悪しの評価はさて置かれる)が数字に出るものだから
先ず呼び水としてSNSでも大人気な「猫」を題材にして仕舞えば客足は伸びそうなものだ。
なのでCMやなんやで客足が伸びていることを伝えられたとしても、それが面白いかどうかとは別の話。
反響があるなら観てみるか、の興味本位の塊が数字になっているだけのことも大いにあり得るから。
あらすじ
冒頭で説明されるので言ってしまうけれど、
世界から消えてしまうのは主人公。彼が癌による死の宣告を受けてからの話だ。
演出上、多くは話せないのだけど映画や創作の物語の根本「こうなったらどうなるのか」を
シミュレートしていくことをする物語だと思う。
この場合、舞台は日本であるし、現代であるし、バチッと自分に置き換えて観ることが出来る人は限られるのかも知れないけれど
特に特徴のない凡庸な主人公にしているのはそういうフレキシブルな存在にしておきたいからかも知れない。
佐藤健は佐藤健
仮面ライダー電王、が僕個人の佐藤健さんを観た初めての作品だったと思うんだけど、
その作品も然り、るろうに剣心も然り、彼は1人2役(以上)の配役に選ばれやすいのかも知れない。
気性の荒い演技は、ベビーフェイスが手伝ってかどうにも迫力に欠ける気はするのだけれど
気弱な人間の演技とのギャップを作り出すのは
最早、佐藤健のお家芸というか、お決まりの奴って感じがします。
今作も御多分に洩れず。
友愛というのは最も不明瞭な愛情
これに弱い。何とも説明のつかない感情だと思うんです友愛って。
この作品はわかりやすくこの世界にあるとされる「愛情」を大きく分けたときの「家族愛」「恋愛」「友愛」「動物愛」を確かめるようなシーンが、個別に描かれているように思いました。
実際、そのどれもを満遍なく育めている人って、そんな居ないのかもなって思うんですけど
大衆を受け入れたい映画コンテンツとしてはこういう贅沢なストーリーにもなったのかなと。
友愛は説明の付かない感情だ、と言いましたが、これは他とのギャップ、
そして僕個人の主観が大きく関わっているのかなとも思いつつも
客観的にも眺めて思うことなんです。
覚めたことを言いますが
家族愛はまぁ唯一のものですし、過ごした時間は必然的、血が繋がっていようがいまいが、その関係性を築くには抗いようのないものすらある気がしています。
時間を共にしていない関係には、やはりしっかりとした繋がりは築けないようにも思います。
次に恋愛。ロマンも何もないことを言いますが、これは繁殖行動というか、生き物に組み込まれた本能的衝動の部分が大きくあるというところから、理屈として、理解ができます。
勿論、個人的にはそれ以外の要素の、素晴らしいと感じるところ、多くありますけどそれは等しく説明出来たものではないですかね。
そして動物愛。これには語弊があるかと思いますが、彼らとの意思疎通というのは難しい。「わかったつもりになる」というのが精々で、利害の一致によって共存共栄すらするものの、散々可愛がっていたつもりでも、ふとすれば家を出て行ってしまうようなこともある。
ただ物言わぬ彼らは兎に角可愛い。一方的な愛として、理解出来ます。健気にも思えるけれど、今のところの結論として、彼らとは本当の意味では相容れない気もしています。
だからこそ、意味不明な行動、非合理的な、彼ららしくない彼らの行動には心が動かされるようなことがある気がします。
そこにつけ友愛には、あまり合理的な要素で説明が利かないところが多いと思うんです。
それをまぁ人は、という僕のような無学者はロマン、の一言で片付けてしまうのですけど
なんとも深い感慨がありますよね。わかりますかね。弱いです僕は。
この世界から何が消えたなら
この物語を見た後には、多くの人がこの問いかけを自分にしたことと思います。
「この世界から何が消えたなら自分は耐え難いだろう」
僕の陳腐な文章からはとてもそこまで考えるには至らないであろうことから、やはり映画とは素晴らしいなと思うわけですけど
この映画の中で一番しびれる演技をしてくれた方を個人的にはお伝えしたいのですが、僕もこの方をこの映画で初めて拝見したのでググった次第です。
バックパッカーのトム役の奥野瑛太さん。彼の表情が何とも哀しくて惹かれました。
どこのレビューでも書かれていそうなことですが、取り敢えず猫好きが見て楽しい映画ではありません。
もし気が向いたら観てみてください。